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繊維の未来を語る

印刷用ページを表示する 更新日:2023年2月9日更新

 広報かつやま2月号掲載 「繊維の未来を語る」詳細版を公開します

燃料費や原材料費の価格高騰、人手不足など現在も様々な課題に直面する中、繊維に携わる方々は今どのようなことを考えているのでしょうか。今回、市長と市内の繊維街者の中から若手経営者5人が対談を行いましたので、その内容をご紹介します。

明治から続く繊維産地 業界全体で困難を乗り越える

市長:どの会社も長い歴史があり、特に明治以降、繊維産業が今の勝山市を形作ってきました。明るい未来の話の前に、多くの課題があるようですね。

山岸:電気代の高騰で非常に厳しいですが、基幹産業として、残っていかないといけません。自社を残すことだけでなく、業界全体で産地を盛り上げていきたいと思っています。

対談の様子1

笠川:当時コロナ禍で受注が激減し、経営が非常に厳しい時期がありました。メーカーや商社に頼るだけでは立ち行かなくなる為、婦人服向けの生地作りで培った自社の強みを活かしてスカーフ製造と販売をはじめました。

白木:白木興業は勝山で一番古い繊維会社です。老舗としてリーダーシップを取っていかないといけないのかもしれないですね。皆さんと同じく、産地として生き残ることを我々の世代で考えていかないといけません。

小泉:最近は挨拶の次に電気代の話が出てきます。委託加工が主なので、原材料価格よりも電気代や燃料費高騰の影響が大きいです。高騰分を工賃に転嫁してもらう交渉をしています。そのような中で賃上げをしていかないといけません。大企業の賃上げがよく取りあげられますが、中小企業の工賃をどれだけ上げてもらえるかも大切です。

織田:我々は縫製業ですが、人材確保が一番の課題です。縫製業は現在、海外が主流ですが、徐々に国内の需要も増えてきています。近年、アパレル系の専門学校では、以前はアパレル企業への就職が主流であったのが、現在は縫製や生地の製造業への就職希望者が増加しているといいます。ものづくりへの意識は高くなっていても、福井の産地を知らない。見学や、体験の機会を増やせば、もっと増えるのではと思います。

白木:今は、どこで作ったか、誰が作ったかが価値を生む時代になってきています。

市長:様々な課題のもと、単独で生き残るのは難しいという話も出ました。仕事だけでなく、一緒にPR活動をしていくことも必要です。勝山市内でも、ひと昔前と違って繊維業との繋がりが薄れてきています。

白木:人材確保については一番の課題です。若返りを図りたいと思っていますが出来ていません。

市長:継続という視点からも若返りや技術の継承は大切ですよね。

笠川:「繊維」というカテゴリーに興味が向きにくい。興味を持ってもらうために、HPやSNS等でもPRしないといけないと思っています。それを産地全体で出来れば良いですね。

山岸:繊維という業種のイメージを変えていかないといけない。勝山市は繊維会社がたくさんあるので、繊維のまちをもっとPRしないといけない。「こんなもの作ってるの!?」と驚かれる様な物を作っていても皆知らない。また、従業員の待遇改善も大切です。今は電気代高騰を理由に値上げができたとしても、やっぱり海外の方が安いよね、となる可能性もあります。それも視野に入れながら考えていくのは難しいのです。行政もバックアップしてもらえるといいな、と思います。

繊維産地の基盤を活かし 別のアプローチから新たな輝きを作る

市長:海外のレベルも上がり、海外との競争という課題も出てきます。電気代や人材不足、賃上げは日本全体の課題でもあります。そのような中で行っている、皆さんの新しい取り組みを紹介してもらいましょう。

笠川:昨年9月から店舗兼カフェを営業しています。自社で糸撚り、糸加工、織りまでを行ったスカーフを染めて、デザインをプリントし、縫製して販売しています。委託加工の仕事だけに頼らず、自分たちで売るものを作っていけたらということで始まりました。コロナ禍で外出もせず、同じ服ばかり着ている中でもスカーフ一つで気分が上がれば良いな、という妻の想いがありました。ショップとしてだけででなく、建物とその空間を活かせるようなことをしたいと思っており、例えばワークショップなどを適宜開催しております。

対談の様子2

織田:ある専門学校生の工場見学ツアーの依頼を受けました。今は福井県内の繊維会社をまわるツアーを行っているので、今後、勝山市内の事業所をまわるツアーがやりたいなと思っています。オープンファクトリー風にできればと思っています。また、加工で出るロスと呼ばれる端材を活用した取り組みの中で簡単にできるものをと思い、法被型のコートを作り、口コミで販売しました。もったいないからだけでなく、ロスも全て活かしてこそだと思っています。BtoCの入口となったのは、シルクスクリーンの体験で、3年程取り組んでいます。年末は京都でワークショップをしました。様々なところで福井や勝山をPRしていきたいです。

対談の様子3

市長:今改めて別のアプローチから産地の基盤を活用しつつアクションを始めているというのは勝山の繊維産業の新たな輝きだと思っています。今までとは違う2人の新しい考え方は素晴らしいですね。

小泉:「産業の観光化」が出来ないかなと思っています。織田さんの取り組みもそうですが、勝山市に行けば工場見学や体験が出来て、製品を買うこともできる、産業観光のまち、みたいな。数年前から「越前勝山織※」を地域団体商標登録しようという動きもあります。※「越前勝山織」とは、勝山で生産された生地のこと。

白木:越前勝山織についてはこれからという時にコロナでまだ十分な周知活動ができていません。越前勝山織は、産地だけでなく、高品質もアピールしたいと思っています。

山岸:新しいことに取り組んでいくことは非常に難しいということも現実です。しかし、固定観念を捨てないといけないと思います。皆さんと交流を深めて、頭を柔らかくして、次のステップも念頭に置きながらやっていきたいです。

市長:新たな取り組みや挑戦が繊維業を次代に残していくためのキーワードになります。これから取り組みたいことはありますか。

笠川:2つあります。本業は委託加工でしたが、それだけでは立ち行きません。そこで、加工のどの工程でも受けます、とオープンにしたところ、様々な会社と取引を行うようになりました。この取り組みは今後も広げていきたいです。もう一つは先ほどの自販事業です。

白木:先代は、勝山全体で繊維作りに取り組んでいけたらいいなと言っていました。例えば、白木興業で作った生地をラコームさんで縫製して、カサ川さんやゆめおーれ、道の駅などで売れたら一番いいな、と思います。勝山=繊維を福井県内でも周知出来ていないのです。実は全世界に誇れるすごいことをやっているのですが、口外出来ない部分もあります。皆で協力して何か作りあげていけたら面白いです。

対談の様子4

山岸:まずは現在の苦難を乗り越えることが大事ですが、勝山市の繊維会社同士が仲間として生き残っていく考えを前に出して、協力して一歩踏み出していくことが大事だと思います。

小泉:繊維業界は歴史があるので、繋がりも深いけれど、しがらみも多いようです。でもそれは過去の話で、今、私たちには何のしがらみもありません。色んな世界に、皆で飛び込んでいければ良いなと思います。

かっこいいものづくりの姿をPRし 勝山を賑やかに

市長:今後の一つのテーマとして「自販」というのもありますね。「産業の観光化」も面白いですね。このゆめおーれ勝山自体も100年を超える繊維工場でした。文化財という面からも積極的にひとつの核としていきたいです。最後に、一人ずつお言葉をお願いします。

笠川:こういう機会を作っていただきありがとうございます。私は、勝山出身の妻と結婚し、子育てのタイミングでこちらに来ました。サラリーマンでしたので、従業員を抱えて、となると荷が重かったのですが、着る服が無くなる訳じゃない、という気持ちで決心しました。

市長:そういう意味では、他の社長方は幼い時から会社の名前を背負って生きてこられた。この町で生まれた方が多い中で笠川さんのような方は貴重です。

山岸:こういう機会があってありがたいです。仲間だと思って頑張っていかないといけないな、と感じました。

市長:前市長はこのゆめおーれを残すのに尽力されました。私は農家の生まれなので繊維にかける前市長の熱量を全て理解していた訳ではないでしょう。しかし、市長になり、繊維の歴史や重要性を実感し、しっかりと残していかなければと思っています。

織田:本日はありがとうございました。新しいことをやろうとした時、型もないし、社員も自分も余裕がない。しかし、どうせやるなら楽しんでやろうと思いました。普通はまずどうやって仲間や仕組み、組織を作るかが先ですが、僕は逆からやりました。そして、実績が出てくると共感する仲間も増えて行きました。勝山市のテーマである「わくわく」と同じく、楽しみながらやっていきたいです。

市長:趣味から始めてビジネスに持っていったというのが大きな広がりになりつつありますね。それぞれの会社の特質を活かしながら頑張ってほしいです。

白木:この中では一番初めに社長になり、大先輩ばかりが相手でした。年代の近い方と話をする時には、話の中で偶然の発想が生まれないかな、と思いながら話したりします。個人的には今、未経験の現場に入ったりしています。現場にいる時は本当に楽しいです。ものづくりの本質の中にいろんなヒントやノウハウがあります。それをいろんな会社に展開できたらいいですね。

市長:近年、国内で物を作っていくことが見直されていますね。

小泉:こういう場をいただきありがとうございます。自分の子どもを入れたいと思う会社にしたい、と社内でいつも言っています。昼間のお父さん、お母さんがいかにかっこいいかを子どもに見せてあげたいです。社員とその家族の幸せな生活を守りたい。「勝山の職人さんたちはすごい」とアピールできたらいいなと思います。ここで働きたいと言って来てもらえるよう、移住の支援もお願いしたいです。また、最近は高度外国人材も来ています。今後は外国人材も増えると思うので、外国人への移住支援も考えてもらえたら嬉しいです。

対談の様子5

市長:市内の介護事業所には15人程インドの方が来られています。移住支援についてもこれまでの枠を超えて検討しています。持続できるまちにしていきたい。本日は皆様のおかげで色々な話が聞けました。誠にありがとうございました。

経営者集合