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埋蔵文化財の調査・研究
勝山市教育委員会史蹟整備課では勝山市内の遺跡の現状変更(工事等で遺跡が壊される状況)に伴う発掘調査を行っています。
ここではなぜ埋蔵文化財を調査しなければならないのか、どのようにして発掘・調査し、またどのように整理・報告しているのか紹介します。
1.埋蔵文化財の調査をおこなう訳
埋蔵文化財を含めて文化財の保護に関しては文化財保護法に基本的な事項が定められています。
文化財保護法は、「文化財を保存し、且つ、その活用を図り、もって国民の文化的向上に役立てるとともに、世界文化の進歩に貢献することを目的」(法第1条)として制定されました。
文化財保護法の主な趣旨
- 政府及び地方公共団体に対しては、「文化財が我が国の「歴史、文化等の正しい理解のため欠くことのできないものであり、且つ、将来の文化の向上発展の基礎をなすものであることを認識し、その保存が適切におこなわれるように、周到の注意をもってこの法律の趣旨の徹底に努め」るべきこと(法第3条)
- 国民に対しては、「政府及び地方公共団体がこの法律の目的を達成するために行う措置に誠実に協力」すべきこと(法第4条第1項)
- 文化財の所有者その他の関係者対しては、「文化財が貴重な国民的財産であることを自覚し、これを公共のために大切に保管するとともに、できるだけこれを公開する等その文化的活用」に努めるべきこと(法第4条第2項)
- 政府及び地方公共団体は、「この法律の執行に当たって、関係者の所有権その他の財産を尊重しなければならない」(法第4条第3項)
文化財の保護は、政府、地方公共団体、所有者その他の関係者をはじめとする国民が、相互に理解し合って協力し行われるものなのです。
2.埋蔵文化財の調査の流れ
埋蔵文化財に関する調査は実施段階により、分布調査、確認調査、本発掘調査、整理保存処理・報告書作成の段階に区分されます。
調査の流れ
- 連絡調整・・・事業者と教育委員会の双方が、公共事業にかかわる埋蔵文化財の取り扱いについて、事前に情報交換や協議・調整を行う
- 分布調査・・・現地踏査等により遺跡の分布状況を確認するための調査。勝山市教育委員会では、平成元年に当市学芸員と発掘作業員により行われている。
- 確認調査・・・最終的な遺跡の所在と詳細な遺跡範囲・性格を確定するための調査。遺跡の範囲に合わせて試掘を行い確認する。
- 本発掘調査・・・事業施行地にかかわる遺跡の記録保存のための発掘調査。発掘調査は確認調査によって判明した事業によって影響を受ける範囲を対象とする。
- 整理・保存処理、報告書作成・・・発掘調査によって出土した遺物の整理・保存、資料のとりまとめ、及びそれらを統合した報告書の作成。
3.予備調査
予備調査は、事業施工予定区に所在する埋蔵文化財包蔵地を把握し、さらに本調査区域の範囲と性格を決定するために行われます。
(1)分布調査
- 文献調査・・・市教育委員会等の遺跡地図などから遺跡の所在状況を把握する。
- 現地調査・・・地形、土壌状態、または現状で出土している遺物の散布状況から推測する。
- 試掘調査・・・人力または機械により現地を掘ってみて遺物・遺構の出土状況を把握する。
(2)確認調査
本発掘調査区域の範囲を把握するために試掘杭または試掘溝などを掘る。
4.本発掘調査
(1)本発掘調査に関する協議
予備調査によって明らかになった埋蔵文化財の取り扱いにおいては、事業者と教育委員会及びその他の関係者との間で早い段階から十分協議し事業計画を決定する時点では事業施工予定区内の埋蔵文化財の取り扱いに関しての調整を行い協定書としてまとめることが必要である。
発掘調査において記録保存が必要となることとなるのは原則として次のような場合とされている。
- 工事による掘削が埋蔵文化財に及ぶ場合
- 恒久的な建築物、道路その他の工作物を設置する場合
- その他盛土、一時的な工作物の設置等でそれが埋蔵文化財に影響を及ぼすおそれがある場合
(2)本発掘調査の手順
本発掘調査では、まず調査対象地の地形を測量した後、機械等を使用して遺物包含層・遺構確認面までの表土を除去する。次に慎重に遺構遺物の検出をし、順次その状況を真・図面で記録し、遺物を取り上げる。地山が検出されるまでもしくは遺物包含層の発掘が完了したと判断されるまでその作業が繰り返される。以上によって現場での作業がほぼ完了する。
- 本発掘調査(現場発掘作業)のフローチャート
1.現地測量
遺跡の立地を明らかにし得る範囲の地形測量を行う。
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2.伐採・表土排除
立木等の障害物を取り除き表土を剥ぎを行う。重機等の機械を用いて省力化・期間短縮をはかる場合もある。
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3.調査区画の設定
数メートル四方(勝山市では3メートル四方)の調査区画を方眼状に設定し正確な発掘を図る。
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4.精査
本格的に作業員を投入し人力で掘削を行う。遺構面の直上の土壌には遺物が堆積していることがあるため慎重な掘り下げが要求される。
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5.遺構・遺物の写真撮影
写真撮影は精査後の遺構・遺物の記録撮影が重要とされる。
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6.遺構・遺物の実測図面
1/10~1/100程度の遺構・遺物の実測図面を人力で作成する。
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7.遺物の取り上げ
必要な作業が終了したものから取り上げを行う。
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8.補充調査
必要に応じて遺構面下の掘り下げや測量を行う。
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9. 埋め戻し
発掘現場の現状復旧を行う。
(3)出土遺物の整理作業
現場発掘作業において取り上げた遺物について整理作業を行う。
- 本発掘調査(出土遺物の整理作業)のフローチャート
1.洗浄・乾燥
取り上げた遺物を個々に洗浄・乾燥する。
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2.注記
遺物一点ごとに出土遺跡、出土場所、出土土層及び出土日を書き込む。記号化する場合もある。
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3.分類
遺物の種類、形態、出土場所等で分類する。
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4.破片の接合
接合可能な遺物を選択し接着剤で接合する必要とあれば石膏を用いて欠損部分を補足する。
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5.実測・拓本
遺物の図面を作る。対象となる遺物の大きさによるが基本的には1月1日で実測する。複雑な文様等は拓本もとる。
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6.写真撮影
必要に応じて遺物の写真を撮影する。
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7.分析
必要に応じて木製品、金属等の分析を専門に機関に依頼する。出土地の土壌の分析も依頼することがある。
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8.保存処理
そのままで保存できないもの(木製品・鉄製品)等の保存処理を行う。
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9.遺物の保管
遺物を収蔵施設に保管管理する。
5.報告書の作成
現地調査、遺物整理の図面・写真等をもとにして遺跡の調査記録を報告書にまとめる。記録保存の調査においては報告書はいわば遺跡に代わるものであり、その遺跡の歴史的な意味を知る唯一の資料となる。発掘調査は報告書の刊行をもって完了となる。