「恐竜渓谷ふくい勝山ジオパーク」は、豪雪地帯に属し、湿潤な環境に恵まれているため、多くの動植物が生息・生育しています。こうした生物多様性は、ジオパーク内の多様な地質から生まれたものです。四季に応じ様々な動植物や風景を楽しむことができます。
ミチノクフクジュソウ(環境省レッドデータブック(RDB)の絶滅危惧種Ⅱ類)は、絶滅の危険が増大している北谷町の標高500m前後の田畑の畦畔部やスギの伐採跡地などに生育しています。キンポウゲ科に属する春植物で、一つの茎に花を多くつけ、花弁は萼方より明らかに長く、春先に陽光を利用して生育し、周囲の樹木や背の高い草などが生育するころには活動を終えるサイクルが特徴です。福井県ではこの地域にのみ自生が確認されています。
本市のミズバショウ群生地は、取立山(P1307.2m)の県境稜線上の約5000m²の湿地部分にあります。雪解けの頃2000株以上のミズバショウが花を咲かせます。北方系の種であるミズバショウが、本地域に群生していることは、植物地理学上重要と考えられています。
平泉寺の社殿へ向かう800mの参道沿いには、「菩提林」と呼ばれるスギ林があります。大きいもので、樹高25m以上、直径1m以上になるスギが生育しています。入口近くのスギは、その切株から200年以上経過していると推測できます。参道の中央附近には、標高180mからブナが生育しています。また、林の林床には、シソバタツナミソウ、シダ類が多く生育しています。平泉寺の境内には、ホソバオキナゴケ、ヒノキゴケ、スギゴケ類などのコケ植物が生育しており人々の目を潤わせてくれます。
市内には、多くのブナ林が存在します。春の新緑の頃には森林浴に訪れる多くの人々の心を癒してくれます。中でも、北谷町谷区のブナ林は、標高440mで、生育地には、フットパスコースが整備されており、自然観察のルートとして多くの人に利用されています。また、このブナ林は急傾斜地に生育しており、ブナのもつ治水性といった特性により、防災上の保安林として保護されています。
例外として、平泉寺菩提林脇(標高180m付近)の出現するブナ林は、福井県内でも下限のブナの生育地の一つであり、貴重なものであります。
六呂師高原には、経ヶ岳の山体崩壊に伴う「岩屑なだれ」により形成された台地の凹地に湧き水や雨水が貯まってできた湿地が多くありました。開発などにより数えるだけとなってしまった湿原のひとつに池ヶ原湿原があります。池ヶ原湿原は福井県を代表する湿原で、周囲は昔かやぶき屋根や雪囲いなどに使用されていたヨシが囲み、中央部はオオミズゴケが生育し、木道脇には、ミズチドリやトキソウ、カキラン、モウセンゴケ等の貴重な湿地植物が観察できます。
また、湿地の一部の池では、春はエゾイトトンボ、アジアイトトンボ、秋はオオルリボシヤンマ、アキアカネなどのトンボの観察地にもなります。
勝山の中央に流れる九頭竜川の堤防には、人々によく知られている桜並木があります。(通称:弁天さくら)この桜は、植栽されたもので品種はソメイヨシノで、ソメイヨシノはエドヒガンとオオシマザクラの雑種で江戸後期に江戸で発見された桜です。明治期になると全国的に広く植栽されました。
明治以前の桜は、勝山の平地ではヤマザクラとエドヒガンです。今でもエドヒガンが自然のままで生育しているものが見られます。特に多く生育しているのは河岸段丘上に見ることができます。長尾山(かつやま恐竜の森)、荒土町松田、野向町薬師神谷、平泉寺町壁倉に生育しておりきれいな花を咲かせています。
また、寺や神社などに植栽されております。市役所近くの西方寺、平泉寺などにもよく見られます。
かつやま恐竜の森(長尾山総合公園)の西側の谷筋や湿地部分にハンノキ群落やサクラバハンノキ群落が見られます。サクラバハンノキは、カバノキ科の落葉樹で環境省レッドデータブック(RDB)の準絶滅危惧種として掲載されています。県内でも自生地が少なくたいへん貴重な群落です。
直径は5cm程度のものが多く、最大のもので直径45cm、樹高20m近いものがあります。
えちぜん鉄道勝山駅裏の山々には、野生のカタクリ50000本が生育しています。ユリ科の多年草で例年3月下旬から4月中旬が見ごろです。約3時間で周遊できるバンビラインと言われる遊歩道が整備されており、「カタクリ観察会」などにより地元の地域づくりにも活用されています。
ニホンカモシカは、文化財保護法により特別天然記念物として、鳥獣保護法により非狩猟獣類に指定されており、捕獲等が規制されている哺乳類です。
クロサンショウオは、加越国境沿いの標高1000mを超える池や湿地帯に生息しています。体長15cm程度の暗褐色のサンショウウオ。福井県に生息するクロサンショウウオは、分布地の南限にあたります。
アラレガコは、国の天然記念物として、勝山市を含む福井~大野の区間が地域指定されています。川の中流域の礫底に生息し、全長21~22㎝の個体が良く見られます。産卵期は1~3月で親魚は11月下旬~12月の増水時に、主に夜間流れの中層を下り河口付近の海の沿岸で産卵をします。
11月下旬の空が灰色に曇り、あられがぱらぱらと降ってくると川の表面に浮き上がり、白い腹を見せ、あられにうたれて流れ下るという奇異な習性をもっています。
河川改変に伴う生息環境の悪化等が原因で、一時期、生息数が激減しましたが、昭和63年から福井県(福井県内水面総合センター)が行なっているアラレガコの研究や保護や養殖など取り組みによって生息数が増加しています。
自然豊かな勝山の川は、毎年6月の中旬から県内外の釣り人で賑わいます。それは、きれいな川で良型のアユが釣れるからです。九頭竜川へ注ぐ支流より上流の渓流には、イワナやアマゴといった魚類が多く生息しています。
市内の山々には貴重な野鳥が生息しています。全国に500羽以下しか確認がされていないと言われる山地体に生息する大型猛禽類のイヌワシや里山などの低山に生息するオオタカなどが確認されています。
共に環境省RDBの絶滅危惧ⅠB類、絶滅危惧Ⅱ類として掲載されており貴重な野鳥です。